知って得するお役立ち情報 2022 ①

---2023年改正予定 化学物質規制の見直しについて---


下記は、令和4年3月23日に開催された第146回労働政策審議会安全衛生分科会資料からの抜粋です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24665.html


①化学物質管理者の選任の義務化 2024.4.1施行

選任が必要な事業場
リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場(業種・規模要件なし)
(リスクアセスメント対象物674種を今後約3000種まで増やしていく予定。化学物質管理者の資格
要件は指定講習会受講(製造事業場の受講は義務、取り扱う事業場の受講は努力義務))

化学物質管理者の職務
・ラベル・SDS (安全データシート)の確認及び化学物質に係るリスクアセスメントの実施の管理
・リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
・化学物質の自律的な管理に係る各種記録の作成、保存
・化学物質の自律的な管理に係る労働者への周知、教育
・ラベル・SDS の作成(製造事業場の場合)
・リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応



②保護具着用管理責任者の選任の義務化 2024.4.1施行

選任が必要な事業場
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場



③リスクアセスメント結果等に係る記録の作成及び保存 2023.4.1施行

リスクアセスメントの結果及び当該結果に基づき事業者が講ずる労働者の健康障害を防止するための措置の内容等について、記録を作成し、次のリスクアセスメントを行うまでの期間(次のリスクアセスメントが3年以内に実施される場合は3年間)保存するとともに、 関係労働者に周知させなければならない。



④リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講じるばく露防止措置の一環としての健康診断の実施・記録作成等  2024.4.1施行

・リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露防止措置の一環として、リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、事業者は、労働者の意見を聴き、必要が あると認めるときは 、医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が必要と認める項目についての健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
・労働者がばく露管理値を超えて暴露した時は、速やかに医師等による健康診断を実施すること。
・上記の健康診断を実施した場合は、当該記録を作成し、5年間(がん原性物質に係る健康診断については30年間)保存すること。

なぜ、このような改正を行うのか、改正に向けたこれまで流れをまとめてみました。

契機は、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンによる印刷会社従業員の胆管がん発症で、問題が明るみに出たのは2012年5月です。

経緯を少し詳しく述べると、
1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンはオゾン層破壊物質フロンの代替品として、1990年代中ごろから2012年ごろまでに販売されたインク洗浄剤に含まれていた。このインク洗浄剤を使用していた大阪の印刷会社の従業員101名のうち17名の男性従業員が胆管がんを発症。その原因は1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンで、特に前者の曝露が大いに寄与していたとされた。
この当時、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンは特定化学物質障害予防規則(特化則)の対象物質(特定化学物質)には指定されておらず、労働安全衛生法違反(産業医未選任、衛生管理者未選任、衛生委員会未設置)で、当該会社と社長は略式起訴され、各々罰金50万円の略式命令を受けただけであったが、2014年9月、患者6人と8遺族でつくる「胆管がん被害者の会」と会社との示談で、一人当たり一千数百万円の補償金の支払い及び再発防止に向けた安全対策の実施に関して、約束が取り交わされ、和解が成立した。

特定化学物質とは、
労働者に健康障害を引き起こす物質として、労働安全衛生法施行令別表第3で定められた化学物質で、その中でも発がん性の恐れありとして指定された物質が特別管理物質です。

2013年 1,2-ジクロロプロパン
2014年 ジクロロメタンと類似した分子構造をもつ四塩化炭素、クロロホルム
特別管理物質に指定され、

2016年には、
全ての業種・企業規模において、化学物質を取り扱う事業場が一定の危険性有害性のある化学物質(640物質、現在674種)についてリスクアセスメントの実施が義務化されました。

しかし、このように規制を強化していっても、化学物質による労働災害は後を絶たず、
化学物質による休業4日以上の労働災害のうち、特化則等で個別具体的な措置義務がかかる物質以外の物質による労働災害が約8割。
使っていた物質が措置義務対象に追加されると、措置義務を忌避して危険性有害性の確認・評価を十分にせずに規制対象外の物質に変更し、対策不十分により労働災害が発生(規制とのいたちごっこ)

という状況で、次のような労働災害も最近起きています。
「スタジオでコマーシャルの撮影をしていたところ、スタッフ32名中16名が、のどの痛み、咳、全身の倦怠感などの症状を訴え、救急搬送された。当日は、午前7時から撮影のため床面を水性塗料で塗装する作業を行い、塗装を乾燥させた後、11時からの撮影時にはスタジオを締切りにし、換気の悪い状態で作業を行っていた。」 油性は有害だが、水性は無害だと思っていたのでしょうか?

現状を打開するため、前述の通り、
厚生労働省は、危険性有害性の高い化学物質を個別に特定し、具体的な措置内容を法令で定めていた従来の仕組みを、事業者が自律的な管理を行うことを基本とする仕組みへと変えていくための改正を行うこととしました。

リスクアセスメントを実施している事業場は全体の5~6割程度で、リスクアセスメントを実施していない理由としては、「危険な機械や有害な化学物質等を使用していないため」が最も多く、次いで「十分な知識を持った人材がいないため」、「実施方法が判らないため」、「労働災害が発生していないため」が続いていますhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h29-46-50b.html

上記「印刷会社」や「スタジオでコマーシャル撮影をしていた会社」も、自分たちが扱っている化学物質が有害なものとは思いもよらなかったことでしょうが、ジクロロメタンと類似構造の四塩化炭素コロロホルムについては、以前より肝機能障害を引き起こすことがわかっていました。

リスクアセスメントとは「事業場にある危険性有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順」を意味しますが、個別具体的な実施方法につきましては、https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo01_1.htmlをご覧ください。



千代田統括支部 開業部会 吉島 哲

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