知って得するお役立ち情報⑧

副業・兼業の促進に関するガイドライン


従来一般的に企業は、原則として副業・兼業を禁止してきました。その要因としては、労働時間の把握が困難(未払い残業代の発生の誘因、健康管理(過重労働))であること、職務専念・秘密保持・競業避止等の義務との兼ね合いなど、解決すべき懸案事項が多かったことがと考えられるでしょう。一方で、情報通信機器の発達も相まって「空いた時間に自宅等で容易に副業!」といったことが可能となり、副業等を希望する方は年々増加傾向にあると言われ、企業は副業・兼業を一律に禁止するのではなく、柔軟な対応が求められるようになってきました。そのような状況の中、副業・兼業に関する厚労省のガイドライン(以下「新ガイドライン」といいます。)が令和2年9月に改定されました。以下、我々社労士として、留意すべき点についてピックアップいたします。

■新ガイドラインの特徴

(1)ガイドラインの目的を新設
「本ガイドラインは、副業・兼業を希望する者が年々増加にある中、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示したものである。」と明記された。
(2)副業・兼業の場合のおける労働時間管理及び健康管理等についてルールが明確化された。


●副業・兼業に関する基本的な考え方

「原則禁止」から「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」へ
【「原則」副業・兼業を認めるべき、という視点を踏まえて】

●安全配慮義務

・就業規則等において、長時間労働等が発生しうる場合には、会社が副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと。
・副業・兼業の内容等を労働者からの報告により把握し、健康状態に問題が認められた場合は、適切な措置を講ずること。

●秘密保持義務

・就業規則等において、業務上の秘密が漏洩する場合には、会社が副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと。
・ 副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩しないことについて注意喚起すること。


●競業避止義務

・ 就業規則等において、競業により、自社の正当な利益を害する場合には、会社が副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと。
・ 副業・兼業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起すること。
・ 他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと。
※会社が不正競争防止法違反に問われることを回避するため。


●誠実義務

・ 就業規則等において、自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には、会社が副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと。


●労働時間管理(少なくとも以下のものを把握しておく)

・ 他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
・ 他の使用者の事業場での所定外労働の有無、見込まれる月の総実労働時間数、及びその最大時間数


●健康確保措置(健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック等)

健康確保措置の実施対象者の選定に当たって、副業・兼業先における労働時間の通算をすることとはされていない。ただし、使用者の指示により当該副業・兼業を開始した場合は、当該使用者は、原則として、副業・兼業先の使用者との情報交換により、それが難しい場合は、労働者からの申告により把握し、自らの事業場における労働時間と通算した労働時間に基づき、健康確保措置を実施することが適当である。


●労働保険・社会保険

・労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合、一の就業先から他の就業先への移動時に起こった災害については、通勤災害として労災保険給付の対象となる。
・1週間の所定労働時間が20時間未満である者、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者については、雇用保険の被保険者とならない(原則通り)。
・同時に複数の事業主に雇用されている者が、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となるが、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)により、令和4年1月より65歳以上の労働者本人の申出を起点として、一の雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、二の事業所の労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が試行的に開始される。
・社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断するため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合、労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても適用されない。また、同時に複数の事業所で就労している者が、それぞれの事業所で被保険者要件を満たす場合はいわゆる二以上事業所勤務の取り扱いとなる。

最後に・・・
副業・兼業に関して参考となる裁判例は次のとおりです。
〇マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)
〇東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)
〇十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)
〇都タクシー事件(広島地決昭和59年12月18日)
〇橋元運輸事件(名古屋地判昭和47年4月28日)
〇小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)
〇古河鉱業事件(東京高判昭和55年2月18日)
〇協立物産事件(東京地判平成11年5月28日)

副業・兼業に関するガイドライン、モデル就業規則、Q&A、解釈通達等
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html


開業部会 堀拓磨

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